思わず女房の名を呼んだ

「お君!」と、思わず女房の名を呼んだ。しかし、べつに改めて言うべきこともなかったので、咄嗟に考えて、用事を吩咐ることにした。「電気座蒲団の線はずしてんか」自分で立ってはずすと、その間座蒲団の温もりから尻を離さねばならない。それが惜しいのだ。「よろしおま」お君は立ってコードをはずした。だんだん座蒲...

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行水をするとき

 安二郎は痔をわずらっているので、電気座蒲団を使っている。その電気代がたまったものではない。尻に焼けつく思いがするのだ。それを想えば、この上灰にしかならぬ高価い炭をうかうかと使うてなるものか。(寒いといえば目茶苦茶に炭をつぎやがるし、暑ければ暑いで、目茶苦茶に行水しやがるし、どだいこのおなごの贅沢...

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仕立物の針仕事

「ほんに。――喧嘩やろか」 豹一はしょんぼり立ち上って、すごすご路次を出て行った。道頓堀の勝はとっくに姿を消していた。

[#6字下げ]二[#「二」は小見出し]

 薄暗い電燈の下で、お君は仕立物の針仕事をしていた。 下寺町の坂を登って来る電車の音や、表を通る下駄の音は凍てついた響きに冴えて、に...

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