珍らしく自分から話しかけた

「なあ、豹一」珍らしく自分から話しかけた。「あのな、……」 以下の言葉はここに写すまでもあるまい。豹一の答は頗る簡単だった。「よろしい。欲しいだけ取って下さい。なんなら月末に請求書を出してもらいましょうか」さすがに声は顫えていた。が、請求書という巧い言葉を思いついたので、豹一の興奮はいくらか静...

このエントリーの続きを読む≫

— posted by id at 03:23 pm  

針仕事の賃

 この頃針仕事の賃を、安二郎の言うままに渡して来たことを、お君はちょっと後悔した。(内緒で銭を蓄めんならん)長い睫毛のうしろで綺麗な眼の玉をくるりくるりまわしながら、針箱の抽出へこっそり隠すべき一円紙幣や五十銭銀貨を頭に描いた。(オーバーてなんぼ程するのやろか) しかし、安二郎が声を掛けたのでお...

このエントリーの続きを読む≫

— posted by id at 03:22 pm  

思わず女房の名を呼んだ

「お君!」と、思わず女房の名を呼んだ。しかし、べつに改めて言うべきこともなかったので、咄嗟に考えて、用事を吩咐ることにした。「電気座蒲団の線はずしてんか」自分で立ってはずすと、その間座蒲団の温もりから尻を離さねばならない。それが惜しいのだ。「よろしおま」お君は立ってコードをはずした。だんだん座蒲...

このエントリーの続きを読む≫

— posted by id at 03:21 pm  

T: Y: ALL: Online:
Created in 0.0109 sec.

http://chuta-aivy.com/