背の高い痩せた男

(どうせ、今登って来た階段の数は何段あったかなんていう問題を出されるに決っているのだ)試験の結果に就いては前以て全く諦めていた豹一は、腹立ちまぎれに、そんなことを考え、そのため一層苛立っていた。(「歩数だけ」と答を書いてやろうかな。但し二段一度に登ったところもあり、正確を期待しがたい――か。ケッ、ケ...

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珍らしく自分から話しかけた

「なあ、豹一」珍らしく自分から話しかけた。「あのな、……」 以下の言葉はここに写すまでもあるまい。豹一の答は頗る簡単だった。「よろしい。欲しいだけ取って下さい。なんなら月末に請求書を出してもらいましょうか」さすがに声は顫えていた。が、請求書という巧い言葉を思いついたので、豹一の興奮はいくらか静...

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針仕事の賃

 この頃針仕事の賃を、安二郎の言うままに渡して来たことを、お君はちょっと後悔した。(内緒で銭を蓄めんならん)長い睫毛のうしろで綺麗な眼の玉をくるりくるりまわしながら、針箱の抽出へこっそり隠すべき一円紙幣や五十銭銀貨を頭に描いた。(オーバーてなんぼ程するのやろか) しかし、安二郎が声を掛けたのでお...

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